「第47回 明治神宮奉納全国氷彫刻展」にて、氷を納めました。
先週、2023年1月14~15日にかけて行われた「第47回明治神宮奉納全国氷彫刻展」に今年も小野田商店が、氷彫刻の素材として、氷を納めさせていただきました。
今年は例年よりも気温が高い中での開催となり、前日13日は最高気温14℃に達しました。
夜もそこまで気温が下がらない中、製作中に氷彫刻の一部が取れてしまうなどのトラブルもあり、悪戦苦闘の末にそれぞれの作品が生まれて行きました。
「夜の踊り子」-赤羽目健吾(帝国ホテル東京)
今年の大賞作品は、赤羽目健吾(帝国ホテル東京)様による「夜の踊り子」です。
海洋生物をモチーフにしたデザインのこの作品は、まさに舞うような躍動感を感じられ、また長方形の平面的な氷ブロックを素材にしているとは思えないほど、曲線的な造形美に満ちています。
特に、作品の隅にみられる泡のような造形の複雑さは感嘆せざるを得ません。
これを気温が低くない、決してコンディションが良いとはいえない氷で仕上げたというのは、まさに職人技といったところです。
「 Love at war」-Bogdan Kutsevych(Ukraine)
また、今回の出場者は東京各所の名ホテルやBarの職人たちはもちろん、北は岩手、南は鳥取まで全国津々浦々の氷彫刻が募りましたが、なんと遥々遠いウクライナからも出場者がおり、国際的な大会となりました。
ウクライナのBogdan Kutsevych様の「Love at war」は他の作品が氷の表面を彫り込んで立体造形物を作るというアプローチなのに対し、氷の内側をくり抜いて造形することで作品を表現する、他にはない個性を持っていました。
これだけ精工に作られた氷彫刻の作品であっても、気温や日照などの条件によっては瞬く間に元の形を失っていってしまいます。
その様子には、ある種のあっけなさのようなものを感じる人も多いかもしれません。
ですが、例えば北海道の有名な彫刻家に「砂澤ビッキ」という方がいますが、彼の作品には「四つの風」という、野外に4本の柱を立てた作品があります。
この作品は1986年から設置され、そのまま風雨に曝され朽ち行くままとなり、現在は1本の柱を残して作品が倒壊状態にありますが、ビッキ氏は「自然が風雪という名の鑿を加える」ことを望んでおり、経年劣化すら作品の一部としました。
もちろん、氷彫刻の作品の数々は崩れ融けて行く、そのことを美としたコンセプトとして作っている訳ではありませんが、 それでも氷彫刻は完全な状態が保たれているのが一瞬に過ぎないこと、徐々に変化しやがて崩壊していくことは、やはりその美を強調しているように思えてなりません。
日本には古来から「もののあはれ」という美のあり様があり、これは無常観に基づく儚い美しさを愛でる精神であり、例えばすぐに散ってしまう桜のような美に象徴されます。
まさに氷彫刻こそ、「もののあはれ」を体現するようなアートといえるのではないでしょうか?
そんな一瞬の美を彩るに相応しい、良質な原料氷を提供できるよう、小野田商店は今年も精進して参ります!