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氷を取り巻く時世は変わっていきましたが…


古来、氷は非常に貴重なものであり、冬季に自然生成された天然氷を氷室に保存して使用するしかなかったため、宮中など一部の人々にしか夏季の氷は手に届かないものでした。明治以降に機械製氷が普及してからは、かつて電気冷蔵庫の代わりに用いられていた氷冷式冷蔵庫のため、まさに人々の生活必需品でした。そして現代においてはご家庭の水道から、最新の製氷機なら14分で氷が作れるものまで登場する時代になりました。

このように簡単に氷が作れるようになった現代において、氷を購入するということは、ある意味とても贅沢な行為になったと言えるかもしれません。

しかし、物事は何においても一長一短。現代においても製氷機の氷よりも、手間暇かけたアイス缶製法による超純氷®が 優れた価値を発揮する面が幾つもあります。

今回のコラムでは、昔ながらのアイス缶製氷にて作られた小野田の超純氷®と、自動製氷機にて作られた一般的な水道氷の氷とでそれぞれどんな違いと強みがあるかを検証していきます。

※アイス缶製法についてはこちらをご参考下さい

雑味のない純粋な原料水


透明で美しい純氷(Wikipediaより引用)

まず氷屋の氷は原料が違うといいます。製氷業界では、製氷工場がつくる氷を「純氷」と呼んで販売しており、主としてアイス缶方式により-10℃前後で、48時間以上かけて緩慢凍結法凍にて作った飲食用氷のことであり、フィルターや活性炭だけではなく、イオン交換樹脂や逆浸透膜(RO)装置を用いて精製した原料水を使っています。

そして小野田の超純氷®は、活性炭ろ過装置と逆浸透膜(RO)装置にて精製した原料水を使用するだけでなく、原料水中の空気を攪拌しながら、不純物が多い部分の水を特殊な製法で処理した純水と交換しながら完全に凍結させるので、結氷まで60時間以上も要します。

日本の水道水は極めて安全性の高いもので、品質保持のための添加剤などは加えられているものの、それが健康に被害を及ぼすことはありません。しかし、それらの添加材が時に「雑味」となってしまうことも事実です。

まず、カルキが大きな雑味の要因です。カルキは本来、次亜塩素酸カルシウムを指す言葉ですが、水道水に含まれるカルキとよばれるものには現状、次亜塩素酸ナトリウムが使われています。痛みやすい生水を安全に保つために欠かせないものなのですが、これは水道水中に微量に含まれるフェノールと反応して、クロロフィノールという物質となり、非常に強いカルキ臭となります。これは本当に微量な濃度でも臭いを感じる原因となるため、逆浸透膜(RO)装置などの設備がなければカルキ臭をゼロに近付けるのは困難と言えます。

そして 水道水に含まれるミネラル成分は、ミネラルは人体に必要なものなので良いモノとして認識されることが多いですが、ミネラルを多く含んだ氷は裏を返せばそれだけ多くの不純物を含んでいるという意味でもあるので氷にする際にはすなわち雑味や濁りの原因となります。

一方で水道水を原料としたご家庭の氷は、カルキを含んでいる分、融けてからもある程度傷まないというメリットもあります。融けた小野田の超純氷®は純水となりますので、カルキなどの添加剤により微生物の繫殖に耐性のある水道水と比べ微生物の繁殖は早いと思われます。コーヒーやお茶の氷出しに使ったなどした場合には、お早めに消費ください。

衛生的な氷


また、氷自体の品質差もありますが、製氷機自体の衛生管理コストを考えると、場合によっては袋入りの氷をつかったほうがリーズナブルかつ衛生的といえるかもしれません。なぜなら店舗などに常設された大型の製氷機はその性質上、電源を切って隈なく掃除するということが難しいですが、それでいて微生物が増えるのに欠かせない水分と切っても切れない関係にあるからです。そして、製氷機の衛生性については以下のような調査も存在します。

病棟の製氷機で作製された氷の細菌汚染調査.日本環境感染学会誌.vol.28.No.4,

2013より「表1 生菌数測定結果 および検出された細菌」の結果をグラフ表記に変えたもの。

過去の研究事例においては、通常の施設と比較しても 衛生水準が非常に高い病院に設置されているものであっても、定期的な製氷機内部の清掃を実施しているにもかかわらず、汚れがひどく水皿の上にバイオフィルム(菌類が構成する、ぬるぬるとした膜)が形成され、水皿の細菌検査を行ったところカビ類とバクテリアが検出されました。

それを踏まえた病院の製氷機、家庭用製氷機、滅菌精製水での生菌数の検査を行ったところ、 いずれも決して低くない量の生菌数が測定されたという結果が残っています。

しかし、適切なマニュアルに沿って徹底的に管理された無菌室でもない限り、微生物はどこにでも存在し、厨房も例外ではありません。従って生菌数の高さをもってして不衛生としてしまえば、発酵食品を伝統的な製法で作り出す施設では、菌を多く内包していたりするので、そういった施設も大変不衛生ということになっています。

なので、問題とされるのはカビ毒を作る真菌や溶血性細菌など、特定の毒素を作り出すか人体に感染(生体内で定着し、増殖し、寄生するという感染の3要素を満たすもの)する菌が存在することなのですがその中の一部、溶血レンサ菌や肺炎球菌といった比較的有害性の高い微生物はBA(血液寒天)培地によって分離培養できるのですが、それらを用いた調査でもいずれの製氷機からも菌が検出されており、これは製氷機内で人体に有害な微生物が普遍的に生存し得るという事実を示したものと言えます。

多くの製氷メーカーでは精製水を原料に使用、さらに小野田の超純氷®では氷になったあとの製品における衛生検査も実施しているので、より安心安全と言えます。

さて飲食店では?


このように、製氷機は場合によっては菌類の温床となっている実態が確認されています。ですが衛生環境は各ご家庭で一定ではありませんし、病院などは消毒に気を使っているとはいえかなり特殊な環境であり、一般的な製氷機の環境として論じるのは適切ではないかもしれません。

しかし多くの飲食店は適切な衛生管理が保健所の指導の下に行われています。果たして、飲食店における製氷機の衛生性はどうなのでしょうか?そしてそれらはどのように評価でき、どんなシーンにおいて製氷機の氷と、超純氷®それぞれの良さを活かしていけるのでしょうか?

後半では飲食店での利用シーンに焦点を当てて解説していきます。